30-21 消えてしまうのか考える、接客の言葉
私が人生で初めてアルバイトをしたのは、
通っていた高校の近くにあった
ファミリーレストランでした。
当時、高校1年生で16歳。
お店の制服を着ることも、
接客をすることも初めてで、
緊張がなかなかおさまりません。
自分のなかで意外なほど出来なかったのが、
「いらっしゃいませ!」という
お客様へのご挨拶でした。
それまでに何百回も何前回も耳にしたことのある、
シンプルな言葉なのに
何故だかうまく言えません。
学校で友達と練習して、
自宅でも練習して、少しずつ慣れてきました。
あの頃から約20年が経過。
数か月前に、感染症の問題が少し落ち着いた時期に
ラーメン店へ行ったことがありました。
お店に入ってすぐ、
店員さんが「いらっしゃいませ~!」
と大きな声で出迎えてくれました。
当然、スタッフの方は全員マスク着用。
元気に出迎えてくれただけなのに
「なんか飛沫が気になるな」と感じてしまい、
妙な罪悪感が湧きました。
とはいえ、きっと私以外にも
大きな声で挨拶されることを
不快に思う人は少なくないはずです。
そうなると、「いらっしゃいませ」という
言葉がだんだん世の中から
消えてしまうのではないかという
考えが浮かびました。
16歳の私が、何度も何度も練習した言葉です。
将来、お店のドアを開けた時に
店員さんはどう迎えてくれるのでしょうか。
「いらっしゃいませ」という言葉が
消えてしまうのかどうか、
複雑な思いで考えています。