30-02 ひたすら募る、タコ焼きへの想い
子どもの頃、母親に
「タコ焼きが食べたい」と
何度もおねだりをしていた記憶があります。
記憶に残っている理由は、
いつもその要求が母親から
却下されていたからだと思います。
「ダメダメ!夕飯が食べられなくなるでしょう」
と言われ、毎回ガッカリしていました。
確かにタコ焼きは、
位置づけがむずかしい食べ物といえます。
おやつにするには重くて、
ご飯にするには軽い。
母親の言う通り、食べれば確実にお腹が重くなり、
夕飯を残すことになりそうです。
でもやっぱり食べたい。
私のタコ焼きに対する想いは募る一方でした。
やがてアルバイトの収入を得るようになり、
友達とお祭りへ行った時などに
好きなだけタコ焼きを食べられるようになりました。
もう母親から「ダメダメ!」と
言われることはありません。
タコ焼きを食べながら、なんとなく
“自立”や“親離”を意識し始めました。
そして、自分が母親となった今でもタコ焼きが大好き。
ある日、子どもと出かけていて
「タコ焼き買おうか」と言ったら、
「え!今それ食べたら夕飯が入らなくなっちゃうよ」
と予想外の反応を受けました。
子どもよりも私の方が幼い感じがして
戸惑うやら恥じらうやら。
結局その日はタコ焼きを買わずに帰りました。
今度は家族のいない、平日の昼下がりに
1人でこっそりタコ焼きを買って帰ろうと
たくらんでいます。